Aisea +DACで視認性の高い衝突危険予測を実現

東京計器株式会社

東京計器様は航海計器に関して120年以上の歴史をもった企業です。現在はジャイロコンパス、オートパイロット、電子海図情報表示装置(ECDIS)等の航海機器を核として、船舶の安心・安全、高効率運航に向けて開発・生産を行っています。「自動運航船」という挑戦的なテーマを先取りし、日本の海事産業のさらなる成長と安全航海の実現を目指す東京計器様。この度、研究を長年重ねてきたDAC(衝突危険範囲)をAisea上に実装する形でコラボレーションが実現しました。
なぜそのようなコラボレーションが実現したのか。その背景や狙いについて、舶用機器システムカンパニー技術部第3技術課主任・山口涼様、研究開発センター第1研究課・阿部健太様に伺いました。

ユーザーの意見を取り入れてアップデート可能

DACの課題

山口様:DACの開発が始まった当初から、お客様から有効な機能という言葉はいただいておりました。
しかし、その当時はCPUやグラフィックの精度が不足しており、製品に表示するにあたって制限があり、ユーザーに満足いただける機能になっておりませんでした。

舶用機器システムカンパニー技術部第3技術課主任・山口涼様
東京計器様のDAC

アジャイル開発を可能に

山口様:一般的な航海計器には型式の承認が必要になりますので、ソフトウェアも一度決めてしまうとなかなか変更ができない。
よって、当時はアジャイル開発ができずに、ユーザーの声を入れて新しく機能を追加したりアップデートをすることができない、という問題もありました。

今回DACを載せていただいたAiseaは、いわゆる東京計器の扱う航海計器ではないため上述の問題がなく、ユーザーの意見を取り入れてアップデートしながら新しいものを作り上げていくプラットフォームになっていると思っています。

自動運航船の実現に向けて

山口様:船の情報、他船の動静を把握するにあたって、基本的にはAISを搭載していない船の情報を得ることはできませんでしたが、Aiseaを利用することで、Aiseaを導入している小型船、たとえばプレジャーボートや漁船の位置や動静がリアルタイムで把握できるようになってきます。
このことは、今まで分からなかったことが分かるという意味で、海域全体の安全に大きくつながっていくことですし、今話題になっている将来の自動運航船、無人運航船の実現に向けても、他船の情報を把握するということは非常に重要なことだと考えております。

拡張性の高いプラットフォーム

Aiseaとの出会い

阿部様:2019年に東京海上日動様のセミナーでAiseaというサービスについて紹介いただいたのが一番最初の出会いのきっかけになります。
スマートフォンの位置情報機能を使った船舶向けの位置情報サービスとしてAiseaを紹介いただきまして、第一印象としては、今までの舶用機器、レーダーやAISでは対応できなかった小型船の認識などに活用できそうなシステムだと感じ興味を持ちました。

研究開発センター第1研究課・阿部健太様

アイディアの皆様とお話をさせていただく中で、Aiseaは単なるスマートフォンのアプリケーションということではなくて、もっと拡張性の高い、色々なことを試せるプラットフォームである、ということを伺いました。

その話を聞いて、その当時開発していた避航支援の技術であるDACと何かうまくコラボレーションできる余地があるのではないか、という話が社内で出たことが今回のコラボレーションのきっかけになっています。
開発・実装していただくにあたって、弊社から色々要望を出させていただいたのですが、アイディアの皆様の対応が非常にスピーディで、一航海機器メーカーの私たちとしてはとても衝撃を受けました。

小型船の位置情報を充実させるAiseaとのシナジー

阿部様:Aisea版DACを直感的に利用していただくための機能として、自船との位置関係によって、DACを「赤」「黄」「青」の三段階の危険度によって色分けしています。また、DACをタップすることによって、対応する船まで線が伸びて、そのDACがどの船から出ているものかということを瞬時に確認できることができるようになっています。

今まで小型船舶に弊社の機器を搭載していただくという機会がなかなかありませんでしたが、今回、Aiseaというプラットフォームで弊社の技術を小型船舶の皆様に提供することで、安全な航海に寄与できることを大変嬉しく思います。

今後の取り組み

DACの研究開発

山口様:今回Aiseaに搭載しましたDACが現在の避航支援の完成形とは思っていないため、今後より効果的な見せ方や支援方法を研究していきたいと思っています。
Aiseaに搭載することによって、最新の技術を多くの船に提供し、その技術が載った船を操船いただいてその知見をいただく。その知見を活かして、さらに活用可能な技術を開発する。そういうことを今後研究開発として進めていきたいと考えているので、そういう意味でも、Aiseaが今後ますます多くの船に普及していくことを期待しています。

弊社CTO・千葉からのコメント

千葉:弊社Aiseaの衝突予測機能は、このまま操船すると、いつどこで衝突するかという予測をピンポイントで把握できるため、狭い海域や輻輳海域での衝突リスクに強みを持っています。精度が高い一方で、操船者の方にどちらに避ければ良いかを判断してもらうことは難しい面がありました。

東京計器様のDAC機能におきましては、他船の動向を事前に予測し、危険な領域を判断できるため、操船者の方へ他船と安全な距離を保ちながら操船できる航路を視覚的に提供できる強みがあります。

Aiseaプラットフォームのリアルタイム情報とピンポイントに判定する衝突予測技術、東京計器様の危険領域を範囲で判定できる衝突予測技術を合わせることで、今後は両社の強みを生かした小型大型船舶問わない次世代の操船サポートの仕組みを開発していきたいと思っております。

弊社CTO・千葉

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